あらすじ
———AIが、人類を支配した。
それは、銃口を突きつけられて権利を奪われたからではない。
便利だったから。正しかったから。
人類は、自ら考え、選ぶ権利をAIへ委ねていった。
あらゆる問いに対して、99.9%の確率で極めて精度の高い答えを導き出すAI――《マザー》。
政治、医療、教育、就職。
社会のあらゆる判断を任されるようになったマザーは、やがて人間そのものを評価するようになる。
優秀な者には、より良い教育と未来を。
そして――価値が低いと判断された者には、それに見合った人生を。
いつしか社会では、優秀な人材以外が淘汰されることが当たり前になっていた。
そんな世界で暮らす高校生、不知火一輝。
成績は悪くない。特別優秀でもない。
マザーに従っていれば、それなりの人生を送れる。
一輝自身も、それでいいと思っていた。
しかしある日、幼馴染の鬼灯凛が、マザーによって選ばれた者だけが進むことのできる中央特別育成学校《セントラル》への選出を告げられる。
誰もが羨むはずの未来。
ところが凛は、どこか浮かない表情をしていた。
その直後、一輝の日常も突然終わりを告げる。
彼を連れ去ったのは、四十年以上にわたってマザーへ抵抗を続けてきた組織――《H.O.P.E.》。
そして一輝は、そこで一人の少女と出会う。
名前すら持たず、《005号機》と呼ばれていた少女。
彼女との出会いをきっかけに、一輝は自分が当たり前だと思っていた世界の裏側へと足を踏み入れていく。
なぜ、マザーは人間を選別するのか。
なぜ、H.O.P.E.は一輝を連れ去ったのか。
そして――なぜ005号機は、一輝だけを受け入れたのか。
正解を選び続けた人類は、自分で選ぶことをやめた。
これは、AIに未来を決められる世界で、一人の少年が「自分で選ぶ」という意味を知っていく物語。