あらすじ

京都・木屋町、高瀬川沿いのコンビニ「みやこマート」。 ここで深夜バイトをするマキは、パンク風の黒ずくめに唇のピアス、愛想のかけらもない塩対応の店員だ。京都という街が心底嫌いなのに、京都弁だけは抜けない。実家は今も花街で置屋を営んでいて、彼女はその「離れ」に居場所を持つ、少し複雑な身の上でもある。 そんな彼女には、人には言えない体質がある。――霊が見える。 来客ベルが鳴らずに現れる客は、たいてい生きていない。レジ袋の値段に文句を言う常連、廃盤になった商品を惜しむ老人、若い頃の未練を抱えたまま彷徨う誰か。今夜も、聞いてもいない話を勝手に始める客がやってくる。 マキの対応はいつも同じ。缶チューハイを三本、黙って呷るだけだ。二本目で声が聞こえなくなり、三本目で姿が見えなくなる。除霊でも供養でもない、ただの「シャットダウン」。 それでも、屁理屈の皮を一枚めくれば、そこには大抵、ちょっとした未練と寂しさがある。マキはそれに深入りしない。同情もしない。ただ「知らんがな」と呟いて、また日常に戻っていく。 母親、父親、幼馴染、コンビニの同僚、常連の霊たち――みんな、うっとうしい。それでも彼女の毎日は、木屋町の片隅で、今夜もいつも通り回っていく。 これは、幽霊を退治しない女の子が、それでも誰かの未練にちょっとだけ付き合ってしまう、京都木屋町の人情怪異譚。

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カクヨム
カクヨム2026/09/18
  • 現在の作品知らんがな ―京都木屋町・人情怪異譚