あらすじ
死者を弔うことが、彼女の仕事だった。
八年前に妹を亡くした十九歳の葬儀師見習い、リゼット・クロウ。
ある日、彼女が勤める教会に、北方の山村から奇妙な葬儀の依頼が届く。
依頼書に故人の名前は記されていない。
そこには、ただ一文。
『まだ生きている者の葬儀を執り行ってほしい』
その村では五年に一度、選ばれた一人が生前葬を終えて山へ入り、二度と戻らないという。
不審に思いながらも村を訪れたリゼットは、さらに奇妙な事実に気づく。
村人たちは、過去に山へ向かった者の顔も名前も思い出せないのだ。
そして、村に残された古い葬儀帳を開いた彼女は、次の参拝者の欄に記された名前を目にする。
――エミリア・クロウ。
八年前に亡くなったはずの、妹の名前だった。
その夜。
宿の窓を、何者かが叩く。
「お姉ちゃん。お願い。私のお葬式をしないで」
窓の向こうに立っていたのは、死んだ妹と瓜二つの少女だった。
なぜ死者の名前が葬儀帳に記されているのか。
生きた人間を死者として弔う儀式は、いったい何を封じているのか。
そして、山の神は何を喰らっているのか。
妹の死と山村の秘密を追い、リゼットは禁じられた山へと足を踏み入れる。
これは、死者を弔う少女が、決して還らない者たちの真実を暴く物語。