あらすじ
これでも昔は本が好きだった。
剣と魔法の冒険の世界。
お姫様を魔王から救う勇者の話。
いつからだろう?
これらの話が嫌いになったのは?
たぶん、十七歳の頃だ。
いや――もっと前だったのかもしれない。
本の中では、主人公達は何か一つを極めていた。
剣なら剣。
魔法なら魔法。
努力して、挫折して、それでも立ち上がって。
最後には誰もが認める「最強」になる。
子供の頃の俺は、それに憧れていた。
俺もいつか、最強の冒険者になる。
それだけが夢だった。
幸い、才能はあった。
剣を握れば、すぐに人並み以上に振れるようになった。
槍もそうだった。
弓も。
格闘も。
火、水、風、土。
回復魔法も補助魔法も、それなりに使えた。
覚えるのも早かった。
だから、周りからは褒められた。
「信じられない程に器用な奴だな」
「優秀な魔法戦士だ」
「お前がいてくれると助かるよ」
嬉しかった。
本当に嬉しかった。
だから、気づくのが遅れた。
俺には、何も極められない。
どんな技術も中級まで。
その先へ進もうとすると、まるで見えない壁にぶつかった。
十六歳になっても。
十八歳になっても。
十九歳になっても。
壁は壊れなかった。
俺は、勇者にはなれなかった。
英雄にもなれなかった。
最強にもなれなかった。
だから――
三年前。
俺は仲間たちに頭を下げた。
「パーティを抜けさせてほしい」
あいつらは、何度も止めてくれた。
考え直せと言ってくれた。
今のままで十分だと言ってくれた。
それでも俺は、出ていった。
最低な奴だったと思う。
それでも。
それでも、諦められなかった。
最強の冒険者になるという夢だけは。
そして三年後。
俺は――
自分が思っていた「最強」という言葉の意味を、少しずつ間違えていたことに気づき始めていた。