あらすじ
刑務官として二十二年間働いた相川宗一郎、四十六歳。
目を覚ますと、かつて遊んだRPGに登場する《黒塔監獄》の監獄長、ディルク・ハーゼンになっていた。
囚人への暴行、食料費の横領、過酷な強制労働。
誰からも憎まれる最低最悪の悪徳監獄長。
そしてゲームの歴史では――百日後に起きる《黒塔大脱獄》で、囚人たちに真っ先に殺される男だった。
逃げることも、辞職することもできない。
ならば、大脱獄そのものを起こさせなければいい。
「腹を減らした人間を八百人も閉じ込めて、反乱しないと思ってる方がおかしいだろ」
食事をまともにする。
意味のない暴力を禁止する。
病人を休ませる。
そして、能力に合った仕事を任せる。
元刑務官の彼にとって、それは善行ではない。
監獄を安全に運営するための、ただの合理化だった。
ところが、石運びをさせられていた女囚は天才魔導技師。
雑用をさせられていた老人は元王国軍参謀。
死刑を待つ男は、王国最強と恐れられた元騎士。
監獄に捨てられていた人材たちが、本来の能力を取り戻していく。
やがて囚人たちは、ディルクを恐れるのではなく信頼するようになる。
しかし彼はまだ知らない。
百日後の大脱獄が、囚人たちだけによって起こされる事件ではなかったことを。
そして百日後。
王国軍が黒塔監獄へ押し寄せたとき――
城門の上に並んだ囚人たちは、脱獄するためではなく監獄長を守るために武器を取る。
「所長には、指一本触れさせない」
YouTubeショート動画
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