あらすじ
【あらすじ】
永禄八年、京・二条御所。
剣豪将軍・足利義輝が討ち死にを遂げた「永禄の変」。
畿内の覇権を握る三好家の宿老たちの間で交わされた書状には、異様なほど一人の男の名が欠落していた。
三好筑前守長慶――公式にはその前年に病没したとされる怪物が、なお病床の奥深くで静かに息を潜めていたとしたら。
阿波の片田舎で「足利の血脈」という記号だけを背負わされて育った青年・足利義栄は、この歴史の微細な歪みの中に呼び出される。
実績もなく、率いる手勢もなく、ただ己の空虚を埋めるように「人との繋がり」を激しく渇望する義栄。
だが、彼を待っていたのは、己の欲望のために新将軍を傀儡(かいらい)として利用せんとする三好三人衆と、「人は集めるものではない」と切り捨てる松永久秀の冷徹な眼差しであった。
やがて織田信長という圧倒的な「焔」が畿内を呑み込み、支えを失った義栄の周りから一人、また一人と人が離れていく。
すべてを失う破滅の道と知りながら、なお孤独の中で人を求め続けた「影の将軍」の胸に去来したものとは――。
【本書の改稿・新装ポイント】
初稿が持つ物語の熱量やストーリー展開はそのままに、歴史叙述技法(鳥瞰と都市史的解説、三層視点の導入、人間と時代の往復)を取り入れ、より深く、より洗練された形で再構成いたしました。
鳥瞰と地政学的解説: 室町幕府の権威構造、阿波平島公方の歴史的位置づけ、畿内と朝廷の政治的補完関係を俯瞰する視点を挿入。
三層視点の導入: 【人物の現在】【語り手の観察】【歴史の俯瞰】を自在に往復し、傀儡として担ぎ上げられた将軍の決断の意味を立体化。
人間と時代の往復: 単なる英雄譚にとどまらない、権力の渦中で己の欲望と孤独に揺れる武将たちの群像劇と歴史の交差点。
大きな歴史のうねりと、小さな人間の生き様が交錯する歴史小説の醍醐味を、一気読みでぜひお楽しみください。