あらすじ
高瀬仁香にとって、兄がアイドルであることは特別なことではなかった。
兄・誠は、人気アイドルグループFIVERAのメンバー。テレビに出ても、ドームのステージに立っても、仁香にとっては昔から変わらない「まこ兄」だった。
十二歳のある日、仁香はFIVERAのデビュー五周年ツアー最終公演を訪れる。
そこで心を奪われたのは、華やかな五人ではなく、ステージの一番後ろから会場を揺らす音だった。
――この音は何だろう。
身体の奥まで震わせる、この音は。
衣食住に比べれば、音楽は重要ではない。
それでも私は、音楽のない世界で、ただ生きるのは嫌だと思った。