あらすじ
「三空修(みそら しゅう)様の適正魔法属性は、『空間魔法』です」
六歳の誕生日の翌日。その一言を聞いた瞬間、父は絶叫した。
空間魔法に攻撃手段はない。魔弾の一つも撃てない者は紛れもない落ちこぼれだった。
それから九年。誰にも祝われない誕生日を九回数えた少年は、名門デイヒル上級学園の教室の前で、扉を開けられずに立ち尽くしていた。
「よお!」
背後から声をかけてきたのは、金色の髪をした青年だった。
「なんで入らねぇんだ?」
「え、あ……いや」
「もしかして緊張してんのか?」
図星だった。黙り込んだ修を見て、彼は声を上げて笑う。
「奇遇だな。俺もだ」
響・シャムロック。平民の生まれでありながら、騎士団に入ると言い切る男。
属性一つの落ちこぼれとして侮られる修を、彼だけは一度も否定しなかった。
「弱いってのは、負けた奴が言うことだろ。お前、戦ったのか?」
誰かにそう言われたのは、生まれて初めてだった。
攻撃魔法はない。魔力量も人並み以下。あるのは、二つの場所を繋ぐだけの魔法と、屋敷の書庫を一年で読み尽くした知識だけ。
それでも修は、たった一つの答えに辿り着いていた。
――僕には、撃つものがない。でも、撃たれたものなら扱える。
これは、攻撃魔法を持たない少年が、隣に立ってくれた友とともに成り上がっていく物語。
そして二人は、まだ知らない。
修の胸で眠る青い石が、何を待ち続けていたのかを。