あらすじ
むかしむかし、あるところに、鏡水湖と呼ばれるほど美しい湖がありました。
鏡水湖には神さまがいましたで。楽しいことが好きで無邪気な神さまは、人にも、人ならざるもの――妖たちにも水の恵みを惜しみなく与え、近くの村に住む人間の暮らしや、湖の周囲に住む妖の暮らしを見守っていました。
けれど、時が経ち――文明が発展した人間たちによって、鏡水湖は埋め立てられてしまいます。
依代を失い、消えてしまいそうになった神さま。それをつなぎ止めたのは、神さまを信仰していた妖たちでした。
妖たちの信仰心によって存在をつなぎ止められた神さまは、自らの神域に妖達の街を作りました。
妖たちが、楽しく暮らせる街を。
そうして神さま――泡沫さまは、自らが作り、妖達で賑わう街を、今も楽しく見守っています。
めでたし、めでたし。
それがここ、夢幻の街。
昼は霧に包まれ静かな街も、日が暮れれば様々な妖が行き交い、店々には明かりが灯ります。
お金なんてものはありません。欲しいものがあれば物々交換。
神秘的な果樹園に、ちょっと変わったものが実る畑。
昔と変わらぬ姿のまま存在する音のない湖。
妖達が現世と行き来するための巨大な鳥居。
賑やかな表通りを外れれば、少しばかり物騒な裏通り。
現世の、人間の常識が通用しない、泡沫さまの作った理で流れる街。
でも、そこに住む妖たちにとっては、それが当たり前の日常です。
そんな所に住む1匹の妖と、もう1匹の、なんてことないお話。