あらすじ
高校二年生の雲居(くもい)仄香(ほのか)は、冬の日の学校からの帰路にふと呼び止められる。人ならざる美しさを持った不思議な雰囲気のそのひとは、
「人を、お捜しなのではありませんか?」
仄香へと問い掛け、一枚の小さな紙を渡す。目の前のひとは気づけば忽然と消えていて、仄香の手には簡易な地図が載る紙が残るのみだった。そこには一文、
――失せ人、捜します。
チラシめいた一枚の紙を、仄香は翌日の学校の帰り道に思い出す。およそ一週間前に異父弟である雲居悠希(ゆうき)が行方不明になった。手掛かりは何もなく、捜査に進展はない。実母、義父、異父弟、そして己からなる家族に思うところのある仄香は、異父弟を心配しながらも、自宅に居心地の悪さを感じていた。それは異父弟を案じきれない罪悪感によるものも含み、仄香は藁にも縋る気持ちで、一縷の望みをかけてチラシの記す場所へと向かう。
地図の先にあったのは「からすのねどこ」という喫茶店。そこには紳士然とした老爺、深山(みやま)朝次郎(ちょうじろう)と、烏羽色の髪と眼をした少年、紫霄(ししょう)がいた。彼らは仄香の話を聞き、異父弟の失踪は神隠しだろうと言う。
チラシを渡したのは店への案内役、八角(はっかく)。中性的な美貌を持つ彼は、からすのねどこに神隠しに関係する人間を導いている。からすのねどこの面々は神隠しをするものを隠(かく)し神(かみ)と呼び、ほとんどの隠し神は動植物の中に稀に生まれる異物、化生(けしょう)だと言う。仄香は半信半疑ながらも紫霄らと異父弟を捜すことを決める。
からすのねどこに関わる中で、仄香は幾つかの神隠しと化生と出会うことに。やがて幼いころに生き別れとなった父親の所在も判明することとなり――。
様々な出会いの末に、自分なりの家族への向き合い方を見つける物語。