あらすじ
「エルネスティーネ・フォン・アーレンスマイア。貴様との婚約を、破棄する」
200名の貴族が見守る大広間で、王太子はそう宣言した。罪状は三つ。すべて身に覚えがない。
けれどエルネスティーネを凍りつかせたのは、罪状の中身ではなかった。三つ、という数を、口にされる前から知っていたこと。そして王太子が、彼女がまだ誰にも話していない反論に、先回りで答えたこと。
――この方は、わたくしが何を言うかを、先に知っている。
19歳。爪が割れ、髪に白いものが混じり、三階まで上がれば息が切れる。医師は言った。悪いところがどこにもない、ただ70の老婆のように疲れている、と。
王家の秘宝〈逆鍵〉は、時を巻き戻す。ただし対価を要する。対価は、術者に最も近き者の時より徴す。
王城の地下、刻の塔。時の流れの外に立つ黒い石の環には、逆鍵が使われた回数だけ刻みが入る。どんな巻き戻しでも、その刻みだけは消えない。
彼女が数えた刻みは、47本だった。