あらすじ
政治は、国会から始まるとは限らない。
ときには、一皿のナシゴレンから始まる。
2013年、春。ルンザット島を離れて10年余り。
田辺直人――グリフは、もう一つの故郷・倉沢町で、小さなインドネシア料理店「ワルン・クラサワ」を開く。
世界遺産を訪れる観光客でにぎわう一方、商店街の衰退、高齢化、耕作放棄地を抱える町。店を軌道に乗せようと奮闘するグリフのもとへ、ある日、大規模太陽光発電計画についての相談が持ち込まれる。
景観か、経済か。再生可能エネルギーか、住民の暮らしか。
やがて問題は町長選挙、外国人との共生、技能実習生の待遇、学校統廃合、そして住民投票へと広がっていく。
賛成か、反対か。
その二択だけで、町の未来を決めてよいのか。
ナシゴレンを囲む会話、一人の訴え、小さな一票が、少しずつ町を動かしていく。
これは、政治家ではなかった男と、自分たちのことを自分たちで決めようとする、小さな町の人々の物語。