あらすじ
「この郵便所、十五日後に閉めます」
異世界へ転移した元郵便局員・朝倉文が任されたのは、利用者もほとんどいないポポロ村の小さな郵便所。
通信石が普及した今、手紙なんて時代遅れ。
赤字の郵便所は、十五日後に閉鎖されることが決まってしまった。
けれど文には、一つだけ不思議な力がある。
【必着便】――一日一通だけ、どこにいる誰にでも手紙を届けられる能力。
「十五日ください。この郵便所が必要だって、証明します」
配達不能になっていた一通の危険通知を届けたことをきっかけに、文は国境を旅する偵察士ロアン・クロスと出会う。
会えば必要なことしか話さない、無愛想な男。
ところが旅先から届く手紙には――。
『街道異常なし。三日後帰投予定。追伸。昨日の茶はうまかった』
……手紙だと、ちょっとだけよく喋るらしい。
郵便所へ入り浸る元人魚姫リーザにからかわれながら、文は一通ずつ手紙を届け、少しずつ村に「郵便が必要な理由」を作っていく。
だがその裏では、正規の郵便印を偽造した不正物流事件が動き始めていた。
郵便所を守るまで、あと十五日。
手紙なら、必ず届けられる。
それなのに――好きな人への一通だけは、どうしてこんなに書けないのだろう。
これは、人の想いを届ける元郵便局員と、会えば無口なのに手紙では少しずつ饒舌になる旅人が、離れている時間まで恋に変えていく物語。