あらすじ
頭の中に、もう一人いる。
技術者だったらしいその男は「エンジ」と名乗り、魔法も剣も教えてくれない。教えるのは一つだけ――分からないことを、分からないまま書き留めておけ。
レーベンが覚えたのは、歩数で道を測ることと、薄い板を震わせて合図を送ることと、帳面をつけることだった。強くなる技ではない。数える技だ。
やがて、誰も打っていないはずの震えが、返ってくるようになる。
十二歳で家を出た。獣使いのゲレル、口の減らないマリマリ、名ではなく番号を持つ藍の3、四十年を「このあいだ」と言うエルフのクリスラーナ、国を捨てたドワーフのグルガス。街道を東へ歩くうちに、二十年以上にわたって王を蝕んできた呪と、それを注文した者の帳面に行き当たる。
呪は、止められる。
だが止めれば、打たされてきた側の里が滅ぶ。
剣で決着のつかない話です。数えて、書いて、ときに書かないことを選ぶ話です。
※この物語には、まったく別の場所からこの世界を観測している者の記録が、ときどき挟まります。そちらはSF寄りです。ファンタジーだけを読みたい方は、その回を飛ばしていただいても筋が通るように書いてあります。