あらすじ
守りたい。だから奪う。
だが、奪うほど、守りたいと願う自分が欠けていく。
家族を失い、やがて命を落とした大学生・結人は、異世界の少年ユイトとして転生する。貧しくも温かな第二の家族に救われた彼だが、その家族まで野盗に奪われてしまう。
絶望の中で目覚めた《万象奪界》は、触れた相手から能力、記憶、感情など、「その人を形作るもの」を一つだけ奪う力。
だが、使うほど他人のものを欲しがる黒い渇きが育ち、やがてユイト自身の大切な記憶や感情まで欠けていく。
十年後。ユイトは〈奪還の獅子〉ガレウス率いる盗賊団の一員として、火を操る少女ライラたちと、悪党から奪ったものを奪われた人々へ還していた。
軽口を叩き、同じ食卓を囲む仲間たち。そこは、二度も家族を失った彼がようやく得た、三度目の居場所だった。
人の欲望を増幅する「白い粉」を追って王都へ潜入した一行は、城から逃げたいと願う少女と出会う。
一冊の帳簿と少女を連れ出した彼らに、王都騎士団の追撃が迫る。
誰を守り、何を奪い、何を奪わないのか。
正義が間に合わない世界で、少年が自分自身を削る力を手に、今度こそ居場所を守ろうともがく異世界ダークファンタジー。