あらすじ

一六八九年、ロンドン。写譜師ナサニエル・クルーは、パーセルの《ディドとエネアス》の低音の上に、誰にも読めない形で一つの名前を刻む。誰も呪わないと決めた女王の歌の、その地面の上に。 三百年後の秋、東京。バロック・チェロ奏者の早瀬奏は、師である音楽学者・氷室慧が殺された現場で、遺された楽譜に奇妙な書き込みを見つける。「全てはバッサカリアが教えてくれる」。師の口癖と一文字だけ違うその一行から、奏は刑事の久我とともに、師が最後に残した謎を追い始める。事件の周りにあったのは、新発見と騒がれた写本と、その真贋をめぐる欲だった。十七世紀の密告と、現代の偽作。二つの時代の低音が、同じ問いに向かって歩いていく。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/09/18
  • 現在の作品沈黙のパッサカリア