あらすじ
過酷な都會の競争のなか、完璧な人間でありたくて限界まで走り続け、倒れてしまった篠田響子。
目覚めるとそこは、一滴の濁りもないクリスタルクリアな『翡翠川(ひすいがわ)』が流れる、歴史ある赤レンガの美しい街『琥珀街』だった。一切の記憶を失った彼女は、純喫茶『翡翠館』のマスター陽平と、妻の百合から、珈琲のしずくと同じ「琥珀」という温かい名前を贈られる。
パンを捏ね、珈琲豆を選別する丁寧な手仕事の日々。傷ついた心は、セピア色のランプの下で、じんわりと癒やされていく。
しかし、夜霧のなかで出会った青年が遺した「結び(むすび)だと思うから」という切ない言葉が、忘れたはずの過去を呼び覚ます。
耳の奥から響き始める、現実世界からの冷たい時計の針の音。私は本当の名前を取り戻し、あの大忙しだった世界へ戻らなければいけないの……?
美味しいパンと珈琲、そして美しいメロディが紡ぐ、大人のための極上の救済ファンタジー。