あらすじ
大きな総合病院の近くにある小さな稲荷神社で、神主は朝霧の中、純白の子狐の亡骸を見つける。神主が丁重に埋葬する姿を、ひとりの女が鳥居の影から見つめていた。
一方、食品会社に就職した二十二歳の唐沢椿は、受付業務を担当することになる。自分の容姿に自信がない椿だったが、同じ受付に配属された三歳年上の野間つばきと出会う。
「椿」と「つばき」
読みは同じだが、漢字とひらがなで表記が異なる二人は、偶然にも同じ名前を持っていた。
しかし、二人の容姿は対照的だった。
つばきは誰もが振り返る美人で、受付を訪れる男性社員たちも彼女にばかり声をかける。自分とつばきを比べるうち、椿は次第に自分の容姿に劣等感を抱くようになる。
受付カウンターに飾られた一輪の椿の花を見つめながら、椿は思う。
同じ名前なのに、どうして自分とつばきは、こんなにも違うのだろう。
その二人の運命は、やがて神社で死んだ白狐と、ある奇妙な因縁によって大きく変わっていく。