あらすじ
一年後、私は断罪される。
婚約者である王太子から婚約を破棄され、聖女を虐げ、国家に反逆した罪によってすべてを奪われる。
そんな未来を、アデライード・ベルフォールは一年前に知ってしまった。
けれど、おかしい。
彼女には身に覚えがない。
聖女に会ったことすらない。
それなのに、未来の断罪にはすでに罪状も証拠も用意されていた。
「だったら、その一年で自分の生きる場所を作ろう」
王都を離れたアデライードが選んだのは、領地の片隅にある古びた建物。
そこを改装し、小さな食堂《リュミエール》を始めることにした。
料理は最初から上手だったわけではない。
パンは焦げるし、スープは煮詰まる。
それでも、食堂には少しずつ人が集まり始める。
無愛想な元騎士。
おしゃべり好きなパン屋の娘。
薬草に詳しい偏屈な薬師。
料理を盗みに来た孤児の少年。
各地を旅する謎めいた行商人。
そしてある日、彼女の前に現れたのは、自分を「虐げられた聖女」として語る少女だった。
けれど、その聖女もまた言う。
「私、あなたを悪役にした覚えなんてありません」
どうやら二人とも、誰かが作った筋書きの中にいるらしい。
食堂で過ごす穏やかな日々の裏側で、アデライードを一年後の断罪へ導くための準備は着々と進んでいく。
二十年前に消された記録。
王国が隠している秘密。
なぜ自分が「悪役令嬢」に選ばれたのか。
断罪まで、あと365日。
これは、決められた結末から逃げ出した令嬢が、
小さな食堂で出会った人々とともに、
誰かに決められた人生ではなく、自分自身の人生を選び取っていく物語。