あらすじ
空が割れた。ガラスを挽くような轟音とともに、世界の境界が破れた。
戦乱が日常であり、人種も、黄金も、権力も、すべてが殺戮の理由となる魔法の世界へ、十五歳の青年・ブルーノは落ちてきた。唯一の仲間は、半透明の霊体——キアーリン。彼だけが視し、彼だけが聞く、皮肉と愛情に満ちた存在。キアーリンが何者で、なぜブルーノの側にいるのか。それすらも、まだ語られていない。
傷つき、疲れ果て、「ただのブルーノ」として無名に生きることを選んだ彼。しかし辺境の村で出会った、牛の耳と小さな角を持つ族長の娘・ティラが、彼の静寂を打ち破る。好奇心に燃える彼女は、ブルーノが隠す「戦士の過去」と「人としての優しさ」の両方を、あまりにも素直に見つめてしまう。
父・ゴーハムの鋭い警戒。夜を徘徊する謎の監視者。そして、ブルーノの存在がこの世界の「理」に与える異変。逃げることに慣れていた彼が、初めて「守りたいもの」を抱えた時、物語は動き出す。
——傷だらけの異世界転移者と、花を愛する少女と、口うるさい霊の同行者。魔法と陰謀が渦巻く世界で、彼らは「ただの自分」として生きる権利を手に入れられるのか。
傷ついた少年たちの、切なくも温かい魔法ファンタジー。