あらすじ
靖子は、生まれつき障害を持っていた。幼い頃から親や周囲の人たちと馴染めず、孤独な生活を送っていた。支援学校を卒業したあと、グループホームへ引っ越し、障害者支援施設のB型作業所へ通い始める。そこでも人とあまり関わらず、寂しい毎日を送っていた。
そんなある日、他の作業所にいた少女・カナコと出会う。
カナコと同じ障害を持ち、家族を亡くして一人で暮らしていた。カナコは靖子を自宅へ招き、二人は少しずつ、距離を縮めていった。
誰かの家に遊びに行ったことも、友人と食卓を囲んだことがなかった靖子にとって、カナコと過ごす時間は何よりも幸せだった。
やがて靖子はグループホームからカナコの家へ引越し、一緒に暮らし始める。
銭湯へ行き、安売りの惣菜を買い、給料日に少しだけ贅沢をする。料理を教わり、化粧を覚え、誕生日を祝ってもらう。
「一緒に笑って食べよ!」
そんな何気ない日々の中で、靖子は初めて、自分が誰かに必要とされていることを知っていく。
しかし、ある日カナコに恋人ができる。
靖子はカナコの幸せを願いながらも、二人の生活が変わってしまうことに不安を覚える。そして、カナコと恋人の間に起きた事件によって、二人の穏やかな日常は突然終わりを迎える。
カナコを失った靖子は、その死を受け入れられない。
遺された骨を小さなペンダントに納め、「これで一緒やね」と胸に抱く。けれど、カナコのいない日々の中で、靖子の心もまた少しずつ壊れていく。
やがて靖子自身にも最期の時が訪れる。
二人が求めていた幸せとは、何だったのか。
──これは、誰かと笑って食べることさえ幸せだった二人の、短い人生の物語。