あらすじ
幕末――。
江戸・試衛館に、誰よりも剣を愛し、誰よりも鮮やかに笑う若者がいた。
その名は、沖田総司。
竹刀を握れば、大人さえ息を呑む天才剣士。
しかし道場を離れれば、仲間と笑い、子どもたちと遊び、近藤勇を心から慕う一人の青年だった。
近藤勇、土方歳三、山南敬助、永倉新八、藤堂平助――。
まだ誰も歴史上の人物ではなかったころ、彼らは同じ道場で汗を流し、笑い、夢を語っていた。
やがて時代の奔流は彼らを京都へ導く。
掲げられた「誠」の一文字。
新選組最強の剣士として、沖田は仲間を守るため刀を振るう。
だが、その身体には静かに病魔が忍び寄っていた。
昨日まで届いた剣が、届かない。
仲間が命を懸けて戦う中、自分だけが戦場へ行けない。
剣を愛し、剣とともに生きてきた男から剣が失われていく時、沖田は初めて問い始める。
――剣を持てなくなった自分に、何が残るのか。
――長く生きることだけが、「生きた」ということなのか。
これは「天才剣士・沖田総司」の伝説ではない。
限られた命の中で、愛し、笑い、苦しみ、それでも懸命に生きようとした一人の青年の物語。
『幕末志華録』が贈る、命と青春、友情、そして別れの長編歴史小説。