あらすじ
――鬼の血は、毒にも、薬にもなる。
前世で人生に敗れた薬局の息子は、転生して大帝国・玄月朝の宮廷で毒見役の薬奴・黄連(おうれん)となった。配属先は、人ならざる者へと堕ちる罪人たちを飼う禁忌の施設「鬼薬房」。毒草の知識と、毒の巡りを遅らせる「延息の呼吸」だけを頼りに生き延びる日々。
ある夜、后宮の寵妃・瑠璃妃が黒い血を流して死す。「鬼の仕業」と決めつけられ、責任をなすりつけられ処刑寸前の黄連だったが、毒草の知識で「人の手による毒殺」を証明してしまう。それを見ていたのは、月の夜ごとに鬼へと近づく運命の第三皇子・朔夜(さくや)だった。
「俺が人でなくなった夜は、迷わずこれを俺の口に入れろ」
手渡された白い小瓶。妃殺しの真犯人、后宮に渦巻く陰謀、そして黄連自身の顔に隠された秘密――。「鬼」と呼ばれる者たちが、人として生き、人として死ぬための物語。