あらすじ
「では――代わりの方を、十人ほどお連れしてもよろしいですか?」
飾れば「背伸びをするな」、飾らなければ「地味で気が滅入る」。 伯爵令息ジュリアンの注文に合わせてきた男爵令嬢フェリシアも、母から借りた大切な真珠を「砂利粒」と笑われてまで、謝る気にはなれなかった。
代わりなら、心当たりがある。 彼がいつも自分と比べて褒めちぎる、あの美女たちだ。
その足でルシアン公爵を訪ね、馬車を三台借りたいと申し込む。理由を聞いた公爵は声を上げて笑い、手配を引き受けてくれた。
翌朝、揃った美女はきっちり十人。 フェリシアとの婚約を解消したジュリアンは、上機嫌で全員を屋敷へ招き入れる。誰もが伯爵夫人の座を狙い、誰一人、ほかの九人に譲るつもりなどないとも知らずに。
一方、屋敷を去ったフェリシアは、公爵と騒動の顛末を楽しむ仲に。 ところが彼は、元婚約者の話を切り上げてダンスに誘い、彼女の好きなタルトまで取り置いてくれる。
悪巧みなら、いくらでも話せたのに。 何の用事もなく彼に会いたいと伝えるのは、どうしてこんなに難しいのだろう。