あらすじ
魔王を倒した。十年かかった。
これで、ようやく日本へ帰れる――はずだった。
昼休みのコンビニから突然異世界へ召喚された、二人の会社員。
社内システム担当の高瀬直人、二十五歳。
建材メーカーの営業だった黒田大輔、三十歳。
面識すらなかった二人に、レスタリア王国は告げた。
「魔王を倒せば、元の世界へ帰す」
他に帰る方法はない。
だから二人は魔法と戦い方を覚え、勇者として戦場に立った。
それから十年。
三十五歳になった直人と四十歳になった大輔は、ついに魔王ゼルガを討ち取る。
長かった戦争は終わった。
大輔は妻と、召喚された時には四歳だった娘のもとへ。直人も十年ぶりに家族のいる日本へ帰れる。
ところが、いつまで待っても帰還の儀式は始まらない。
王国が用意していたのは、帰還の魔法陣ではなく、爵位、屋敷、領地、仕事――二人がこの世界で暮らし続けるための破格の待遇だった。
不審に思った二人が調べ始め、やがて知ることになる。
自分たちを日本へ帰す術式など、最初から存在していなかった。
王家はそれを知りながら二人を召喚し、十年間その事実を隠していた。
ならば、もう王国の言うことを聞く理由はない。
王家のために戦うのも、貴族の都合に付き合うのも、魔王亡き後の戦争を背負うのも、これで終わり。
必要な資料は全部持っていく。
勇者もやめる。
そして今度は、誰かに命じられた場所ではなく、自分たちで行き先を決める。
目的は一つ。
日本へ帰る。
十年間「勇者」として戦い続けた二人の元会社員が、魔王討伐後の異世界を旅しながら、自分たちを召喚した魔法を手掛かりに帰還方法を探していく。
これは魔王を倒すまでの物語ではなく、魔王を倒した二人が家へ帰るまでの物語。