あらすじ
王宮の掃除婦には、誰にも教えられていない仕事がある。
誰も使わない部屋を、毎朝掃除すること。
リナ・ベルは、十年間ずっとその部屋を掃除してきた。
だから、分かる。
机が少し動いている。
床に新しい傷がある。
昨日までなかった足跡が残っている。
そして、ある朝――
誰も入れないはずの部屋に、血痕があった。
そのそばに落ちていた紙には、たった一言。
『あの子は、生きている。』
十五年前。
この王宮では、生まれたばかりの王女が死んだ。
それは誰もが知っている事実だった。
けれど、記録を調べるほど、リナは奇妙なことに気づいていく。
王女の死を確認した者は、誰なのか。
なぜ、十五年前の記録には不自然な空白があるのか。
そして――
なぜ今になって、誰かが「あの子は生きている」と残したのか。
リナは英雄でも探偵でもない。
ただ、掃除婦として毎日同じ場所を見てきたからこそ、誰も気づかなかった「昨日との違い」に気づいてしまった。
小さな血痕。
一枚の紙。
消えた人間。
十五年前の秘密。
そして、死んだはずの王女。
王宮に隠された秘密を一つずつ拾い上げたとき、リナが知ることになるのは――
この国そのものに関わる、誰にも知られてはいけなかった真実だった。