あらすじ
鹿児島出身の元ミス鹿児島、中村彩花は、横浜出身の明彦がネットに公開した「KOKURA物語」に納得がいかなかった。同じ九州なら、なぜ小倉なのか。なぜ、先に自分ではないのか……その思いを抱えたまま、羽田空港の国内線到着口で初対面の彼に鹿児島弁で詰め寄る。開口一番の剣幕に明彦はたじろぐが、二人はほどなく打ち解け、リムジンバスで東京駅を経由し、八丁堀のビジネスホテルへ向かう。バスの中で彩花は明彦をさりげなくからかい、ホテルに着くと「壁ドン」をねだる。ためらいがちだった空気は、キスをきっかけに一変し、二人はその夜を共にする。明彦行きつけのインドレストランでビリヤニを食べながら、彩花の「宮部の妻」ジョークに二人で笑い合い、距離は急速に縮まっていく。
ホテルに戻った二人は、もう一度夜を共にする。彩花は鹿児島の男たちとは違う明彦の丁寧な接し方に戸惑いながらも、次第に心を許していく。朝、明彦が買ってきたサンドイッチとおにぎりを分け合いながら、彼は横浜行きを提案する。彩花は体の疲れも忘れて心を弾ませる。
土曜の朝、八丁堀を出て、東京駅から横須賀線・京浜東北線を乗り継ぎ、山手駅へ。明彦の母校・聖光学院を訪れた彩花は、モダンな校舎と彼の青春時代に興味を惹かれる。根岸森林公園のベンチで、明彦は公園が日本初の洋式競馬場だった歴史や米軍接収の過去を語り、彩花はパドックの廃墟や未返還の米軍住宅地に驚く。市営バスで中華街へ向かい、元町やフェリス女学院の異国情緒に見惚れながら、「上海飯店」で鰻や小籠包を味わう二人。
山下公園を抜け、ホテルニューグランドへ向かう途中、明彦の高校時代の友人・良子と偶然再会する。気さくな良子と明彦の親しげなやり取りに、彩花の胸にちくりと嫉妬が芽生える。バー「シーガーディアンII」で三人で飲むうち、良子の昔話が続くにつれ、彩花の中で小さな苛立ちが募っていく。明彦の過去の人間関係に直面した彩花の心の揺れは、二人の関係に新たな展開をもたらしていく……。
言葉は鹿児島、舞台は横浜。二人の距離が縮まるほど、物語は単純な一夜から外れていく。