あらすじ
前世は定食屋の次男坊。過労死して気がつけば異世界の辺境の街カシュカに転生していた俺――ルトは、十五年かけて小さな食堂「かじか亭」を営むまでになった。ある日の昼下がり、店に転がり込んできたのは、王都を追われたという元・毒見役の少女リコ。感情の灯りを消した目をした彼女は、店で起きた「毒殺未遂事件」を、銅の水筒に青く咲いた錆――緑青の知識一つで鮮やかに解体してみせた。「給金は食事三食でいい。毒見は私がやる」。こうして始まった奇妙な同居稼業。街に持ち込まれる妙な事件――発酵しすぎた祝い酒、泣きながら毒を売る行商人、領主の食卓を震わせる「呪いの魚」――を、元毒見役の知恵と転生コックの包丁が、肴と共に解きほぐしていく。毒は人を殺す。だが、飯は人を生かす。腹が減っては謎は解けないのだから。