あらすじ
「毒殺、条件付きの自然死、それとも――ただの食あたりか」
検屍官として七年、幾千の遺体と対話してきた芹川深雪は、過労の果てに解剖台の外側から内側へ足を踏み入れるようにして死んだ。目が覚めれば、異国の子爵令嬢オードリー・ヴァン・クレアール、十五歳。
前世の記憶を抱えたまま、彼女は誓っていた。今度こそ、事件とは無縁の、平穏な人生を送るのだと。
しかし入学初日、王立ラウレンス学園の講堂で、生徒会副会長が血を吐いて倒れる。悲鳴が渦巻く中、職業病じみた観察眼が勝手に動き出し、気づけばオードリーは全生徒の前で真相を語ってしまっていた。
「事件性なし、で通してくれませんかね……」
そう願う元検屍官の呟きも虚しく、彼女は学園の派閥抗争――次期生徒会長選挙という名の静かなる戦争の渦中へと、否応なく引きずり込まれていく。
これは、前世の知識と、殺しても死なない観察眼だけを武器に、貴族の陰謀渦巻く学園を生き延びようとする令嬢の――しかし絶望的なまでに事件から逃げられない――物語。