あらすじ
婚約者の神谷直人から、浮気相手との結婚を告げられた久住真帆。
慰謝料の話をする前に、直人の母・佳代が静かに立ち上がった。
「こんな息子、私も要らないわ」
家族のために料理も名前も時間も差し出してきた佳代は、真帆に一枚の鍵を渡す。海辺に残された、母の古い食堂の鍵だった。
「婚約破棄の慰謝料は、あなたのお母様で結構です」
真帆はそう言って、佳代と二人で海辺の小さな食堂を始める。
けれど、二人の新しい暮らしが軌道に乗りはじめた頃、直人が戻ってきた。欲しいのは母の愛情ではない。食堂の土地と、佳代の名前と、倒れかけた会社を救うための金だった。
これは、ひとりの男に捨てられた二人の女が、誰かの妻や母という肩書きを脱ぎ、自分たちの食卓を取り戻す物語。