あらすじ
「君の名前は?」
「名前なんて、俺にはねえよ」
すべてを持つ皇太子が、初めて自ら手を伸ばしたのは、名前すら奪われた少年だった。
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白磁と真鍮に覆われた天上界・高天原(たかまがはら)。
そこは中央演算アマテラスによって、生命も感情も管理された“完璧な楽園”だった。
次代の太陽として育てられた皇太子カケルは、何不自由ない日々の中で、自分だけが欠けているような感覚を抱いていた。
ある日、紙で切った指から流れた彼の血を、楽園は“異物”と判定する。
自らの生命すら拒絶する世界に、カケルは初めて疑念を抱いた。
一方、下層界では、名前の代わりに「UNIT-08」という識別番号を与えられた少年が、高天原への復讐を誓っていた。
機械の右腕を持ち、すべてを奪われても、生きる意思だけは手放さなかった少年。
彼が力尽きようとしたそのとき、絶対であるはずのアマテラスに、あり得ないシステムエラーが発生する。
そしてUNIT-08は、憎み続けた楽園へと堕ちた。
傷ついた少年を救ったのは、ほかならぬ皇太子カケルだった。
カケルは、名を持たない彼に「ヤマト」という名を与える。
何ひとつ自分で選んだことのない皇太子と、名前さえ奪われながら自らの意思だけで生きてきた少年。
出会うはずのなかった二人は、互いの孤独に触れ、やがてかけがえのない友となっていく。
だが、完璧な秩序にとって、二人の絆は排除すべき“不具合(エラー)”だった。
ヤマトを守るため、カケルは初めて、自らの意思で楽園に背く。
その選択に呼応するように、彼の内側では、アマテラスの演算さえ捉えられない異形の力が目覚め始める。
すべてを持つ皇太子と、名前すら持たなかった少年。
虚飾の世界を壊すのは“神の意思”か。
それとも、少年たちの“自らの選択”か──。
日本神話×スチームパンクで描く、神話SFファンタジー。
※挿絵は機能復旧後に追加予定です。