あらすじ

海が霧に沈み、その奥から魔物が湧くようになって十数年。霧の切れ間を突ける船だけが物を運べる時代に、藤咲湊は碧洋海運の最下層で凪読みをしていた。 資格も学歴もない湊の出航判断は、社内では「勘」と呼ばれていた。新任の運航部長・鴻巣はAIの海況予測を根拠に、船員全員の前で湊の契約を打ち切る。 湊は自分が作った航路メモを一冊残らずデスクに置いて出た。手順は全部書いてある。だが霧の濃度も鳥の高度も潮目も、読める目がなければただの紙だった。 翌朝、配送追跡ページに碧洋海運の遅延が三件並ぶ。 湊は小型貨物船を一隻だけ持つ白鷺汐里と組み、誰も使わない時刻の海を渡りはじめる。碧洋海運からの提示額が上がるたび、業界は「あの会社が作業員ひとりで回っていた」ことを知っていく。 魔法なし、戦闘なし。あるのは霧を読む目と、断る権利を先に告げる誠実さだけ。

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カクヨム
カクヨム2026/09/16
  • 現在の作品「勘で物を言う男に給料は払えない」と海運会社をクビになった俺、航路メモは全部置いてきたのに、元会社の船は今月七隻が霧で止まっているらしい