あらすじ
「馬を怯えさせる厄介者に価値はない」
濃すぎる飼料の危険を訴えた私は、大牧場主ガレスにそう言われて牧場を追われました。
その半刻後。雪の上に、近衛の黒馬三十六頭が横たわっていました。
私に治癒の魔法はありません。あるのは、蹄の熱と脚の腫れと耳の動きを読み、冷却と給水と飼料を一頭ごとに組み直す手だけ。夜通し付き添えるのは、一日に一頭が限界です。
だから私は、今日から一日一頭ずつ、立たせます。
馬が嫌がる処置はしません。乗るかどうかは騎手が決め、雇うかどうかは団が決め、私をどうするかは私が決めます。
三十六頭目の黒馬は、騎手団長の愛馬でした。
――残り、三十六頭。