あらすじ
領民、わずか四百人。
村は二つ。家臣は十数人。
戦となれば、農民をかき集めても五十人。
中国山地の奥深くに存在する小さな領地――黒瀬郷。
その弱小国人・黒瀬家の嫡男として生まれた黒瀬景政は、十二歳になるまで、自分の国がどれほど小さいのかを知らなかった。
転機となったのは、父に連れられて訪れた尼子家の本拠・月山富田城。
巨大な城。
溢れる人々と物資。
何百、何千という兵を動かす武将たち。
そして景政は、初めて知る。
自分たちの「国」は、外の世界では名前すら知られていないことを。
「――黒瀬を、大きくしたい」
始まりは、少年の小さな意地だった。