あらすじ
「私、存在がなくなっちゃったみたいなの」
ある夏の日、一人の少女――榊原夏澄 (さかきばら かすみ) が、この世界から消えた。
学校から名前が消えた。彼女が暮らしていたはずの家もなくなった。写真を見返しても、そこに彼女の姿はない。
昨日まで彼女と話していた友人も、彼女を知っていたはずの教師も、誰一人として「榊原夏澄」という少女を覚えていなかった。
それどころか、彼女と過ごしたはずの思い出さえ、最初から彼女が存在しなかったかのように書き換えられている。
世界から、一人だけが綺麗に抜け落ちていた。
それでも―― 一實雅 (ひとさね みやび) だけは、幼馴染のことを覚えていた。
手掛かりを求めて雅が向かったのは、幼いころ、二人が初めて出会った神社。
夕暮れに染まった境内で、ようやく彼は夏澄を見つける。
ただし、再会した彼女は少しばかり変わっていた。それでも夏澄は、いつもと変わらない調子で笑った。
「ふふっ、君なら見つけてくれると思った」
いつもと変わらないようで、何もかもが変わってしまった日々。
友人も、家族も、学校も、故郷も。誰も彼女を覚えていない世界で、それでも二人の夏だけは過ぎていく。
なぜ、夏澄は消えたのか。なぜ、雅だけが彼女を覚えているのか。そして――彼女が本当に“なくした”ものとは何なのか。
世界から存在を失った少女と、彼女をただ一人覚えている少年の奇妙な夏休み。彼女が“なくした”ものを見つけるため、二人は『ひとなつ』を駆け回る。
これは、この世界から“消えた”幼馴染を見つけ直す、ひと夏のボーイ・ミーツ・ガール。