あらすじ
第一章「考えすぎる男が、考えた末に一番危険な選択をした話」
勤めていた郵便局を辞め、日々を無為に過ごしていた中年男。
先月なかったことが今月あるわけもなく、今月なかったことが来月あるはずもない日常。
現代日本。都市部の古いマンションに住む但馬(たじま)は、ある日自宅のベランダが異世界のダンジョン「第1層」へと繋がっていることを発見した。しかし彼は、勇者として覚醒するわけでも、ダンジョンで無双するわけでもなかった。
現代日本の物資と、趣味である雑学、好奇心を武器に、卑小な欲望を胸に秘め、リスクを最小限に抑えたダンジョン踏破を開始する。
自製の粗末な武器では行き詰まるも、ダンジョンで拾ったアイテムにより、次々と異世界から助っ人の女性が派遣されるという幸運を得る。
献身的な頼れる護衛。物静かで典雅な魔法使い。不平家な弓使いの没落貴族。主人公にのみ批判的な前衛等とパーティを組んでいく。価値観の違う異世界の彼女たちに対し、但馬は「文化の差異」を説き、口八丁手八丁で彼女達をけむに巻きながら、着実に階層を進んでいく。
第1章後半。子供の頃は「子爵家の将来を担うホープ」と将来を期待されていたのに、「成人すればただの人」と陰で笑われている地方貴族のその場の思いつきで、主人公たちは国境の城塞へと送り込まれる。没落貴族を冷酷に使い捨てする城塞司令官。部下から信望されている傭兵隊隊長。戦場後方の帷幄にて策謀する司教参事会長。誰からも決して尊敬されることのない助祭長。辺地での異常を察知した国中央から派遣された聖職禄神官。戦雲急を告げる国境の城塞で、様々な立場の人たちが己に課せられた使命を全うせんとする。
これは、偏った知識と現代日本の道具を抱えた偏屈な男が、異世界の常識をのらりくらりと躱しながら進んで行く、泥臭くも知的なサバイバル・ファンタジー。
これは、異世界ものの皮をかぶった「人間関係と認識論の物語」であり「理解できない者同士がどう関係を築くか」、「事実」ではなく「解釈」が人を動かす物語。
これは『拒絶の物語』。主人公は組織を拒絶し、馴れ合いを拒絶し、ついにはパーティーメンバーの1人からも拒絶される。主人公を縛る関係も、迎えてくれる家族もいない。完全なる自由と、完全なる孤独。そこから主人公が「人としての在り方」をどう見つけ出すのか、それを求めていく物語。
作中日本の元号順は、明治・大正・光文・平成・令和となっています。
現実世界の地球と政党や法制度や歴史が必ずしも同一とは限りません。
ダンジョン騒動の為、ロシアはウクライナ侵略戦争をはじめていませんし、
日本は万国郵便条約を改めていない等、現実の世界とは少し異なる設定となっています。
各編の主題はこうなっています。
─国境の城塞─ 戦記
─名前の無い村─ 伝奇・奇譚
─嫁取り試合─ 恋愛・悲恋
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