あらすじ
夜が終わらない世界で、人々は死者を恐れていた。
死んだ人間は、放っておけば蘇る。
残された記憶を真似、愛する者の声で呼びかけ、生きている人間を死者の側へ引きずり込もうとする。
そんな「死者になりきれなかったもの」を葬るのが、夜葬屋――黒鐘トウヤの仕事だった。
ある日、トウヤの前に一人の聖女が現れる。
彼女の名は、リリアーナ・エルセリア。
教会の不正と汚職を告発しようとした彼女は、真実を握り潰され、逆に聖女の地位を奪われて追放されていた。
帰る場所も、頼れる人もない。
そんな彼女が目をつけたのは、無愛想で聖女嫌いの夜葬屋だった。
「ついてくるな」
「はい」
「帰れ」
「帰る場所がありませんので」
――そして、なぜかついてくる。
働かなければ食事も寝床も与えないと言われれば、夜葬屋の助手になる。
嫌われれば、笑って受け流す。
冷たくされれば、別の方法で懐へ入り込む。
聖女としての力だけではなく、自分の可愛さすら武器にして。
これは、死者を葬る男と、教会から追放されたしたたかな聖女が、終わらない夜を生き抜いていく物語。
――死者には容赦のない夜葬屋と、あざとく生き残る聖女。
二人の奇妙な共同生活が、始まる。