あらすじ
銃声が響いた。そして目を覚ますと――高橋是清は、異世界の貴族の赤ん坊になっていた。
新たな名は、カイル・フォン・ヴァルハイト。
前世では総理大臣、大蔵大臣を歴任し、幾度もの経済危機と向き合った男。
ところが二度目の人生で待っていたのは、固有能力
【魔石生成――一日一個。ただし、極めて低品質】
周囲からは「落ちこぼれ」と笑われるカイル。 だが彼は腐らなかった。
「ないものを嘆いても仕方あるまい。――で、僕にできることは何だ?」
能力を毎日鍛え、畑を耕し、この世界について学ぶこと数年。 やがて魔石生成は【一日最大十個・高品質】へと成長する。
そんなカイルに下されたのは、凶作と貧困に喘ぐ最果ての地・ノルデンの領主就任命令。
名誉ある栄転――という名の、事実上の追放だった。
しかし本人は、
「国から見捨てられた土地なら、好きにやっても文句は言われんということか」
と、どこ吹く風。
痩せた土地には輪作を。
家畜の餌にされていた豆には、新しい価値を。
金がなければ、領内に仕事と産業を。
そして何より――
「異世界でも、あんぱんが食べたい!」
ただそれだけだったはずなのに。
カイルが一つ問題を解決するたび、寂れていた市場に人が戻り、仕事が生まれ、捨てられていたものに新たな価値が見つかっていく。
やがてその変化は、行き場を失った人々の人生まで変え、王都さえ無視できない大きなうねりとなって――。
元・高橋是清が、前世の経験と【魔石生成】を武器に、貧困領地を立て直していく物語。
……なお本人は今日も、焼きたてのあんぱんを頬張りながら首を傾げている。
「わしは、あんぱんを流行らせたかっただけなんじゃが……?」