あらすじ
精神科医・桐庵修司が目を覚ますと、そこは戦国時代だった。
与えられたのは軍師の地位でも、神秘の力でもない。
土蔵を改装した、たった一部屋の診療所。
やがて、そこを訪れる。
織田信長。
武田信玄。
明智光秀。
上杉謙信。
羽柴秀吉。
徳川家康。
歴史に名を刻んだ英雄たちが、誰にも言えない悩みを抱えて診察室の戸を叩く。
「家臣どもの仕事が遅い」
「二十年眠れぬ」
「胃が痛む」
「人が信用できない」
「褒められないと眠れない」
「心配で眠れない」
教科書の中では完璧に見える偉人たちも、診察室の中ではただの人間だった。
恐れ、嫉妬し、迷い、孤独に耐えながら生きている。
現代の精神医学を知る医師は彼らを診る。
しかし、診断名は書かない。
なぜなら、人は病名ではなく、その人が背負ってきた人生によってできているからだ。
信長は本当に冷酷だったのか。
光秀は本当に裏切り者だったのか。
秀吉はなぜ人を求め続けたのか。
家康は何を恐れて生涯を過ごしたのか。
診察室から見えてくるのは、英雄でも悪人でもない。
歴史の裏側で悩み続けた、一人の人間の姿だった。
これは、歴史上の偉人たちの心を診る物語。
そして。
病を治す物語ではなく、人を理解しようとする物語。
『偉人メンタルクリニック ~主訴・天下布武。診断名は、書きません~』
今日も診療時間です。