あらすじ
大陸の東西を結ぶ交易路の途中、砂と葡萄棚の匂いが入り混じる関市・白鷺関(はくろかん)。都を逐われた薬師の娘・白 芷苓(はく しれい)は、誰も引き取り手のない死体の毒を見分ける「毒喰らい」として、細々と生計を立てていた。
ある晩、隊商組合の元締めが宴席で急死する。役人たちは「傷んだ魚のせい」と片付けようとするが、遺体の指先の痺れと瞳孔の開き方は、芷苓にひとつの毒草を告げていた――烏頭(うず)。
同じ頃、新任の巡察官として関市に着任した沈 明玉(しん めいぎょく)には、誰にも明かせない秘密があった。都の政争に敗れ、一度は命を絶たれたはずの身。生き延びるために身分を偽り、かつて自分を陥れた一派の尻尾を追ってこの辺境まで来たのだ。死んだ元締めの帳簿に記された不審な取引の記録は、探していた糸口そのものだった。
利害の一致した二人の女――毒にしか興味のない薬師と、笑顔の下に刃を隠す策士――は、それぞれの思惑を抱えたまま手を組むことになる。後宮の壁の内ではなく、あらゆる嘘と欲が行き交う関市を舞台に、毒と陰謀の真相を追う頭脳戦が始まる。