あらすじ
「シャルティエール・グランシア! 貴様との婚約を破棄する!」
――そう宣言されるはずだった公爵令嬢は、その場にいなかった。
千二百年を超える歴史を持つレイグライド王国。
その公爵令嬢シャルティエール・グランシアは、自らを断罪しようとする動きを事前に知り、何事もなかったかのように王国を去っていた。
婚約破棄も、身に覚えのない罪も、彼女にとってはさほど重要ではない。
放っておけば、それで終わる話だった。
――王国が、彼女の『罪』を正式な事実として公表するまでは。
「口から出た言葉には全て責任が伴うのですよ」
怒りに任せて剣を取ることもない。
軍勢を差し向けることもない。
国を飢えさせる必要もない。
ただ、隠されていた事実を、本来それを知るべき者たちへ返していく。
商人が動く。
冒険者が調べる。
聖職者が問いかける。
そして、闇に生きる者たちが真実を拾い上げる。
やがて王国は気づき始める。
自分たちが追放したつもりになっていた一人の少女が、いったい何者だったのかを。
これは復讐のために国を滅ぼす悪役令嬢の物語ではない。
自ら発した言葉の責任を、千二百年の古王国が問われる物語である。