あらすじ
桜守シリーズ第二弾
地下鉄の乗り換え通路。二十前後といったところの女性が屈んで何かを探している。端から見れば装飾品でも落として、それを慌てて探しているように見えるだろう。
彼女の名は早稲田信愛。若年発症型感音性難聴という不治の耳病を抱えており、補聴器がなければ日常生活もままならない。そんな必需品を通行人との接触事故で落としてしまった。
ああ、もう最悪。顔を俯けていると涙が零れてきそう。これで独りめそめそ泣いてしまったらどれほど惨めなのだろうか。
「すみません」と男性の声が突然左耳から聞こえてびっくりして肩を跳ねさせる。泣きそうな顔を見られないよう顔を俯けながら立ち上がって「……すみません」と謝罪して壁際に寄った。
彼はいつまで経っても通り過ぎようとしない。通行の邪魔だから退けという意味の「すみません」ではないのか? 彼をもう一度よく見たら手を差し出していた。彼の掌に掬われていたのは信愛の補聴器だった。
「えっ、どうして……!」
「そこに落ちていましたよ」
少し離れたタイルを指さして彼は優しく微笑んだ。
彼の名前は相良優武。この出会いをきっかけに二人は惹かれ合い、恋に落ち、愛し合い、一年の交際期間を経て結婚へと至る。
しかし結婚して三か月も経たず、バス事故によって優武は死んでしまう。
失意に暮れる信愛の前に霊能力者を名乗る桜守景が現れ、優武ともう一度だけ会って話ができると言われ……。
桜守シリーズ第一弾→https://estar.jp/novels/25667957