あらすじ
「お前は大丈夫じゃない時ほど、大丈夫って言う」
光出涼は、政界の中枢に影を落とす名家・光出家の嫡男だった。
父は元総理にして、今なお与党最大勢力を動かす実力者。
閣僚人事、派閥均衡、次の総理候補――その裏側に名が挙がる家で、涼は幼い頃から「次代の光出」として扱われてきた。
完璧な容姿、優秀な頭脳、誰にでも柔らかく接する処世術。
けれどその身体には、中学時代のある出来事をきっかけに壊された傷が残っている。
久遠政輝だけが、その傷を知っていた。
食事が食べれない時があること。
女性に対して恐怖があること。
性衝動が自分の意思とは無関係に生じること。
そして、触れられなければ、現実に戻れない夜があること。
政輝は、涼の呼吸が壊れるたび、手を取る。
恋人ではないのに、誰よりも近い。
名前のない関係のまま、二人は高校、大学、そして政界へと進んでいく。
ただ、そばにいたいだけなのに。
壊されていく人生の中で、ただ一人だけが光だった。
これは、その光に名前を与えるまでの物語。