あらすじ
予定調和な正解ばかりの毎日に、
時には愛すべきバグがあってもいいではないか。
西暦1885年――明治時代の東京。
夜の雨が降る街道の闇のなかで、
一人の少女が冷たい真鍮の剃刀を握り締めていた。
彼女には名前がない。
自分が何者なのか、何のためにそこに立っているのか、
記憶の頁は完全に白紙のままだ。
転生回数、柒(7)回目。
柒(7)回くらいじゃまだまだこの世界に生まれたばかりの「ひよっこ」。
ただひとつ確かなのは、
人間の喉元を掻き切り、
その命を『不要なもの』として消去する瞬間に、
脳内を焼き切るほどの凄まじい
「快感」を抱く最凶のサイコパスであること。
これは、本物の日常とは少しだけ時代背景が違う、
もう一つの平行世界《マルチバース》。
血税一揆から西南戦争、秩父事件にいたるまで、
明治日本の血塗られた歴史をすべて裏から
完璧なタイムテーブルで設計していたのは、
西郷でも大久保でもない、
この名前なき少女だった。
被害者の年齢も、性別も、住んでいる地域も完全にバラバラ。
何の一貫性もない猟奇的な通り魔として処理されていた各地の連続殺人が、
実は被害者たちの首の皮膚に自然と浮かび上がる
「未知の傷跡の規則性(数理暗号)」で繋がっていることに、
一人の執念深い刑事が気づいたのは、
つい先日の『8人目の殺人の調書』が並べられた瞬間のことだった。
そして、13人目の抹消を執行した夜。
大通りのガス灯の下で、
世界の時間が【 17 : 19 : 23 】の位置でピタッと凍りつく。
時計塔のレンガの壁がハゲ落ち、
その向こう側にある「真っ白な幾何学的な格子線」が剥き出しになった。
世界が、壊れかけている――?
不条理な日常の完全初期化(白紙化)から、
この平行世界の地球を救うため。
日常を剥ぎ取られた真っ白な虚空のド真ん中で、
彼女の生命反応が完全に掻き消えた(完全停止した)その刹那、
残された大工の「隣の男(拓之助)」がその真鍮の剃刀を引き継ぎ、
ゲラゲラと軽いノリで人間を嘲笑いながら降りてくる
「大天使」たちの不条理な仕様へと、
明治のアナログな執念を掲げて立ち向かう!