あらすじ
スロベニア・ピランを舞台にした20代30代女性向け国際恋愛の短編小説。
前後編で完結する読み切り作品です。
友人の結婚式に出席するためスロベニアを訪れた30歳の日本人デザイナー、ミユ。式のあと十二日間だけ一人で過ごすため、アドリア海沿岸の小さな町ピランへやって来る。
東京では、親しい元同僚から「二人で小さなデザイン事務所を始めないか」と誘われている。しかし仕事だけでなく友情まで失敗させるのが怖く、返事を延ばしたままだった。
夕方のタルティーニ広場で、海風にさらわれたミユの薄い青灰色のスカーフを拾ったのが、弦楽器修復を仕事にする32歳のスロベニア人、ヤカだった。
無口でも意味深でもない。必要なことはすぐ言い、思いつけばすぐ動く。ただし、自分の先の予定だけは曖昧にする男。
翌朝、偶然とは言い切れない再会をしてから、二人は市場で朝食を買い、海沿いを歩き、ヤカの仕事場で昼を食べ、夕方には丘の上から町を眺めるようになる。
「十二日しかいない」と分かっているからこそ、一緒にいる時間は軽いはずだった。
ところがミユは、ヤカが数か月後からヴェネツィアで長期修復案件に加わることを、本人ではない人間から知らされる。
好きになったから怒ったのか。
それとも、自分だけが二人の続きを考えていたことが怖かったのか。
塩田の夕暮れで二人は初めて、「別れるかどうか」ではなく、先が決まっていない相手と、それでも続きを選べるかを問われる。