あらすじ
第一王子レオン・ゴギョウ・アルヴェインは、十五歳で授かったギフトが《ツボ押し》だったため「ハズレ王子」と蔑まれ、ついには廃嫡されてしまう。
与えられたのは、王国でも最も貧しいヴァレリア辺境領。
壊れた家、汚染された井戸、不当に搾取される領民。
しかも赴任早々、レオンは教会で「役立たず」と虐げられていた銀髪の元聖女ルルナと出会う。
だがレオンが彼女の身体に触れた瞬間、《ツボ押し》の本当の力が発揮された。
彼には、人や物に流れるマナの“滞り”が見える。
そのツボを押せば、身体の不調を癒し、魔力の流れを整えることができるのだ。
長年苦しんでいたルルナを一度の施術で救ったことで、彼女から向けられたのは感謝を通り越した、
「これより先、永遠の忠誠をお誓いいたします」
という激重な忠誠だった。
さらにレオンは、教会の不正を暴き、悪徳村長を追放。
ルルナの《聖域》によって汚染された井戸を蘇らせ、不当に奪われた穀物を領民へ返していく。
やがて、かつて王国騎士団長だった女騎士エレナも彼の前へ現れる。
戦争で脚を負傷し「女としての価値」しか見てもらえなくなった彼女に、レオンはただ一言告げた。
「俺は戻しただけだよ」
失われた剣を取り戻したエレナは、自分を女としてしか見なかった王太子ディランを見限り、レオンへ騎士として忠誠を誓う。
「拾ってやった」と恩を着せていたエレナに目の前で選ばれず、激昂するディラン。
さらに、彼女を慕っていた騎士たちまで次々とディランのもとを離れ、ヴァレリアへ集まり始める。
無能だと追放した兄のもとへ、自分が手に入れられなかった人材が次々と集まっていく。
そしてレオンは、増えた人々を養うため、新しい畑を拓き、仕事を作り、少しずつ領地を豊かにしていく。
《ツボ押し》しか持たない無能な元王子。
そう呼ばれていた男の周囲には、いつしか聖女、女騎士、領民、そして行き場を失った者たちが集まり始めていた。
だが、ヴァレリアの変化を見ているのは人間だけではない。
──人の住まない山の奥の龍族。
──国境のさらに向こうで虎視眈々と狙う魔族。
長いあいだ動かなかった“何か”まで、この小さな辺境領へ目を向け始める。
これはハズレギフト《ツボ押し》を授かった廃嫡王子が、人と土地の“滞り”を一つずつ解きほぐし、
やがて誰にも無視できない領地を作り上げていく物語。