あらすじ

十年。ミリアは王城の毒味役として、三千六百五十回、王妃の食卓に先に口をつけてきた。 何度も倒れ、何度も生き延び、そのたびに王妃は笑った。「壊れたら替えればいい」と。 十年目の朝、ミリアは気づく。——もう、どんな毒も効かない。 そして、もう一つに気づく。この十年、毒を盛った刺客など一人もいなかったこと。 厨房も、侍女も、薬師長も、誰ひとり盛っていない。それでも彼女の体には、二十八度ぶんの跡がある。 跡はある。入り口が無い。 答えを探しはじめた矢先、城から使いが出る。次の毒味役に、八つ下の妹の名が書かれていた。 薬師の孫娘は、剣を持たない。持っているのは十年分の手帳と、祖母に教わった処方と、 十年ぶん誰にも言わなかった沈黙だけだ。 告発はしない。物証も掲げない。 ただ、椅子から降りる。——それだけで、この城は立ち行かなくなる。

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カクヨム
カクヨム2026/09/15
  • 現在の作品十年『壊れたら替えればいい』と笑われた毒味役が城を出た翌朝、王家はパンひとつ飲み込めなくなりました