あらすじ

神谷蓮司と結婚して三年目。車のスピーカーから、知らない女の声が流れた。今夜は何時に来るのかと蓮司に尋ねる甘い声の向こうで、小さな子どもが泣いていた。  蓮司はすぐにBluetoothの接続を切った。  私は前を向いたまま、一つだけ聞いた。 「私は今夜出ていけばいい? それとも明日の朝?」  ハンドルを握っていた蓮司の手が数秒止まった。 「出ていかなくていい。汐見台の家は真帆に渡す。ほかの条件は弁護士に任せる」 「わかった」  カナリア塾の最初の授業で、真紀先生から教わったことがある。関係を始める時は、自分が何を欲しがっているのか相手にわからせておけばいい。そのほうが、相手は安心する。  そして去る時には、欲しかったものへ慌てて手を伸ばさない。  蓮司の前では、私は「お金さえあれば満足する女」で通してきた。  あの年の修了試験では、一位だった。

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カクヨム
カクヨム2026/09/15
  • 現在の作品車のスピーカーで夫の「もう一つの家庭」がバレた。騒がなかった私を見て、夫のほうが慌て始めた