あらすじ
迷宮には、探索者がいる。
魔物を倒し、財宝を探し、名声を得る。
危険な迷宮を攻略する彼らは、いつだって物語の主役だ。
――だが、彼らが去ったあとには、誰かが片付けなければならない。
泥。
血痕。
壊れた装備。
腐食した床。
残された私物。
そして、誰にも拾われない小さな痕跡。
灰原蓮は、迷宮清掃公社に勤める清掃員だ。
戦闘能力は低い。
人の気持ちを読むのも苦手。
英雄になりたいわけでもない。
ただ、危険な現場を安全に戻すことだけは、人一倍うまかった。
排水を確保する。
汚れを除く。
壊れたものを片付ける。
必要なら、現場に残った小さな違和感を確認する。
それは事件を解決するためではない。
――仕事を、最後まで終わらせるためだ。
華やかな英雄たちが去ったあと。
誰にも見向きもされない最悪の現場で、
名もなき人間たちの残した「本当のもの」が、泥の下から静かに現れる。
これは、英雄の物語ではない。
英雄たちが食い散らかした迷宮を、
黙々と元に戻していく、一人の清掃員の仕事の記録である。