あらすじ
十五年前、すべてを失った。
名を捨て、素性を隠し、旅の巫女「小夜」として生きる九重澪。
誰にも深く関わらず、一つの土地に長く留まることもなく、それが自分に残された生き方だと思っていた。
そんな彼女の前に現れたのは、白嶺国を治める若き国主・神代景継。
三月前、戦場で一本の矢を受けて以来、原因の分からない熱と黒い痕に蝕まれているという。
「俺を信じろとは言わない。俺の城を見ろ。家臣を見ろ。民に聞け」
当初は関わることを拒んだ澪だったが、景継の身体に残された異様な“何か”を知り、白嶺城へ向かうことになる。
調べるほどに深まる謎。
矢に残された不可解な気配。
何者かによる襲撃。
そして、景継の霊脈を内側から蝕む、消えたはずのもの。
命を救うため、澪は長く隠してきた力へ再び手を伸ばす。
それは同時に、彼女が封じてきた過去を呼び覚ますことでもあった。
人を信じることをやめた巫女と、彼女の秘密を暴こうとしない国主。
やがて二人の出会いは、一国の運命と十五年前に失われたものを巡る戦いへ繋がっていく。